七十二侯の「紅花栄(べにばな/さく)」
おはようございます。
今日は小落ち(コーチ)ブログとします。
5月25日からは、七十二侯の「紅花栄(べにばな/さく)」です。
紅花は最初、明るい橙色(だいだいいろ)の花で、
雨を戴き、どんどん紅の色が濃く可憐になって
いく様がとても味わい深い花です。
この紅花は、またの名を
末摘花(すえつむはな)と言います。
源氏物語をお読みになられた方は、源氏物語に
末摘花という貴族の娘の話が出てくることをご存知でしょう。
そちらは、醜女(しこめ)、現代で言う
ブスの代表とされています。
この末摘花と呼ばれた女性が若い頃と、
年老いての二度、光源氏に抱かれるのです。
紫式部は、この光源氏と末摘花に道長卿と
自分を重ねたのかも知れませんね。
このように観ますと、末摘花は、紫式部にとっても、
紅花の名産地である山形にとっても、
両方とも非常に価値のあるものです。
因みに、紅花の先っぽ(末)を摘んで染料に
するところから、末摘花と言われたようです。
また、この花は食用油としても有名ですので皆さんも
お使いになられたことがあるかもしれませんネ。
さて、梅雨となり雨が降る。
これから、木々にとっては、恵みの季節です。
末摘花もいっぱいに雨を戴いて、花の色が
グーンと深い紅色になってくると思います。
梅雨もらい
末摘花や
紅深し (クマ:お粗末)
目次
時候を表す季語
山々が自分の一番好きな色を
思い出したのでしょうか?
大地からの力強いエネルギーを受け、
「万緑(ばんりょく)」の悦びを発しています。
万緑という言い方は何と力強い言い方なんでしょう。
山々全体から彼らのエネルギーが迸っているようです。
京都 北山杉は
万緑の夏
万緑や
杉こだち抜け
風の笑む (クマ:お粗末)
時候を表す色
せっかく、紅花の候なのですから、
「紅」を色として採り上げましょう。
紅花はご存知の通り山形、最上地方の名産です。
梅雨の始まる頃に、黄色の花が雨水を頂くからでしょうか、
命を吹き込まれたかのように黄赤色に染まります。
この紅花の花を染料として出来た色が「紅」と呼ばれます。
山形の名産として古来、有名ですが、原産地が
エジプトと言うことを知る人は
少ないのではないでしょうか?
このキク科の植物の花から採れる色が
「紅(べに:くれない)」と呼ばれる鮮やかな赤色です。
5世紀頃に中国から入ってきたそうですが、
『三国志』で有名な魏、呉、蜀の呉から
もたらされた藍色と言うことで、「くれのあい」から
「くれない」とも呼ばれました。
紅花は平安時代から貴重な色として愛されたそうですが、
この赤色は日の本の民のこころを深く捉えたのでしょう。
さらに貴族たちは濃く深い鮮やかな色を求めました。
こうして、「唐紅(からくれない)」と呼ばれる色が
できてきたと言うことです。
在原業平が『古今和歌集』に、
「ちはやぶる神代もきかず竜田川 からくれないに
水くくるとは」と詠っています。
不思議なことが当たり前のように起こっていた神代の
時代でもこんなことは聞いたことがないよ。
紅葉が竜田川に多く浮かんでいるが、竜田川も紅色、
特に唐紅の色が好きなのであろうか、川そのものの
色全体を真っ赤に染めてしまったことよ。
こんな感じの響きでしょうか?
在五中将・業平がこのように詠うほど紅色、
唐紅色がこの時代に好まれたのでしょうネ。
さらに、この紅花は非常に高価で貴重な
ものでしたので、使用制限が出来ました。
これから生まれた言葉、色が「一斤染(いっこんぞめ)」。
紅花一斤(約600g)を使い、
絹衣が一疋(いっぴき)できると言いますから、
2反を染めるのに、紅花を一斤使うと言うものでした。
紅を充分に使えないので、色がその分薄くなるのですが、
かえって柔らかく、淡い紅色となりました。
これはこれで淡い上品な色となり、
一般庶民にまで使われました。
お上が限度を決めたことから、
「聴色(ゆるしいろ)」とも呼ばれたそうです。
今日はここまでお読みいただき、ありがとうございます。
このような内容を綴った本を出していますので、
お読みいただければ気晴らしになるかもしれません。