第七十二候、最終候「雞始乳」
願わくは 花のもとにて 春死なむ
その如月の望月のころ
おはようございます。
私が好きな西行法師の和歌から今回は始まります。
はや2月とならんとしています。
如月(きさらぎ)となります。
この如月と言うのは、旧暦の2月を表す言葉ですから、
今の季節で言うと、3月。
また、望月は満月のことですから、西行法師は
3月中旬以降の桜が咲いている頃に詠んだのですね。
因みに、法師が逝去されたのは、文治6年2月16日と
言いますから、まさに歌の通りの日に亡くなられたのですね。
西暦に直しますと、1190年3月31日ですから、
桜の下での大往生だったのではないでしょうか。
閑話休題、
今は、寒い、寒い「大寒」ですが、この最後の候が終われば、
暦では二十四節気で言う「立春」となります。
皆さんの周りに春の薫りが漂い始めているといいですね。
さて、第七十二候、最終候「雞始乳(にわとり/はじめて/とやにつく)」。
鶏が春の気配を感じ、産卵をするために鳥小屋にいく
ということから、とりごや→とや/とやにつくと、
言ったそうですが、この言葉の音に乳という
漢字を当てるのは面白いですね。
垂乳根(たらちね)から来た言葉でしょうが、
親になる、母になるという意味で使っているのだと思います。
鶏は古来、神の使いと考えられてきました。
夜の静寂(しじま)と朝の間に、「コケ、コッコー」。
魔が入り込まないように、誰もが口を真一文字に結び、
音を立てないようにしている暗い時間に、
太陽の明るさを呼び込むかのような一声。
天照大御神が御隠れになって、日々が経過するにつれ、
闇にまぎれ魔や邪がどんどん蔓延んできました。
このような1年の最後、七十二候で、鶏が鳴き、
神が天岩戸からお出ましになる。
新しいサイクルが始まります。
この七十二候のように、何事にもサイクルがあります。
われわれの人生もそのサイクルで考えることができます。
一つひとつの経験を経ながら螺旋階段を昇っていく
イメージでしょうか。
あなたはどのような螺旋階段を昇っておいででしょうか?
新たなサイクルに踏み出す方もいらっしゃると思います。
みんな、顔晴れ(がんばれ)!!
目次
時候を表す季語と色
<時候を表わす季語>
寒々と 落葉樹
眠りにつきしと 観えども
春の息吹を 冬芽に備えし(お粗末)
厳寒の一葉
冬芽に春託す(お粗末)
「冬芽(ふゆめ)」の中には春が詰まっています。
春を閉じ込めた冬芽がぷっくりと大きくなってくると
中の春がどんどん出て参ります。
春です。
もう一つ、節分会がもうそろそろとなってきますと、
奈良の都には「春日万燈籠(かすがまんとうろう)」の
準備で忙しいのではないでしょうか?
石灯籠だけではなく、本殿回廊に設えられた釣り燈籠を合わせると3千基と言いますから、これが一斉に灯っているのは壮観でしょう。
これら万燈籠を寄進した何百年前から現代までの人々のこころが灯っていると観れば、日の本の民の心根の優しさを感じます。
<時候を表わす色>
前候では、絹の色である「練色」をお話しました。
日本人には古からお蚕様から頂く練色が重用されましたが、
このお蚕は原産がエジプトとも言われる古いものです。
しかしあまりに貴重なものだったのでしょうから、
絹を着けるものは少なかったのでしょうネ。
そのかわり、麻から作った布や、似ている草ですが、
より光沢があり、高級とされた亜麻という草から
採れた繊維を使いました。
この色を「亜麻色(あまいろ)」と言いました。
とても上品な薄黄褐色です。
そうそう、今流行りの亜麻仁油は
このアマ科の1年草の種子から採るのです。
日本に伝わったのは、江戸後期で、
北海道で栽培が始まったと言われます。
今は健康食品として重用されているのですが、
古くは、非常に強い繊維を持っているので、
船の帆に使われていました。
面白いですネ。
いよいよ、この候で、1年の72候もお終いです。
今年は2月2日が、節分会です。
そして2月3日の「立春」で、新しい年の
サイクルが始まります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
クマこと高柳昌人(向龍昇人)でした。
このような七十二侯を綴った本を出しました。
是非、お手に取って観てください。