お蚕さんは禍をもたらす「禍威獣」ではありません。二十四節気「小満(しょうまん)」、第二十二侯「蚕起食桑(かいこ/おきて/くわを/はむ)」
おはようございます。
今日は雨模様ですが、ここにきて、気温の上昇が著しくなってきました。
この気温の上昇に伴って草木が一段と葉を伸ばしています。
家の裏の里山の緑が日々深くなっていくのが面白い。
ちょっと前まで、薄緑の山だったのに、
深い緑が所々に入り、薄緑、萌葱色と相まって活気が見えてきます。
命が大きく膨らんできているのを感じる季節です。
このような節気を、気が満ちてくる、命が段々と、そして、活き活きと地に溢れ満ちてくると言う意味で「小満(しょうまん)」と言う言葉の節気を作ったのでしょう。
素敵な言葉です。
閑話休題、
皆さんは「お蚕(かいこ)さん」をご存知でしょうか?
クマが小さい頃、まだ近くに、「お蚕さん」を飼っていた農家がありました。
蚕の幼虫が吐く糸から、「絹」ができるのですが、どうやって糸を採って撚り、紡いで、絹として織り上げるのか解らないでしょうネ。
また、今では、正絹(しょうけん)と言う織物がお蚕さんの糸からできているということを知らない人の方が多いのではないでしょうか?
試しに、養蚕(ようさん)と言う漢字をパソコンに打ってみたのですが、すぐには出てこないほど、ほとんどの人に知られなくなったのですネ。
蚕を飼う歴史は、数千年前からあると聞いたことがありますが、この蚕は自然界には存在できないものなんです。
蚕を山の中に生えている桑の木に乗っけてみますと、すぐに死に絶えてしまいます。
人間の手を借りなければ、生存できない動物を人間は創り上げたのですネ。
さて、桑の葉も4月に入ると、新芽が出てきますが、生まれたばかりのお蚕様には、この柔らかい新芽を細かく刻んで食べさせます。
そして1ヶ月も過ぎ大きくなった幼虫は1頭で(そうそう、何故かは知らないのですが、蚕は1匹ではなく、1頭と数えます)、大きな桑の葉を1日で何と20枚(25gぐらい)も食すと言われます。
スゴイ食欲です。
夜でも食べ続けており、小さい頃、隣の家が養蚕をしていたので、深夜、ガサゴソと言う音に怖くて飛び起きた記憶が甦ります。
このくらい食べないと、繭をつくれないのでしょう。
食欲と言いますと、クマはとても食いしん坊です。
この頃に出てくるソラマメ。
もう食された方はいらっしゃいますでしょうか?
このソラマメ、どんな漢字が当てられるかご存知でしょうか?
蚕豆と書いてソラマメと呼ばせます。
なんで蚕と言う字を当てるかと申しますと、ちょうどこの季節にお蚕さんは繭を作るのですが、その繭の形にソラマメの形が似ているのでソラマメに蚕の字を当てたと謂われています。
なんて素敵なネーミングなんでしょう。
昔の人はチャーミングですよネ。
いやいや、こんな薀蓄なんざ、横に置くとして、こんな日にゃ、ビールを飲みながら蚕豆を口に放り込む。
美味しくて、おいしくて。
口いっぱいに頬張り、グビッ。いや~あ、ビールが喉に心地いいだろうな。
蚕豆を
口いっぱいに
夏来たり! (クマ:お粗末)
ちょいと、話を戻しまして。
今、新宿ではゴジラが睨みをきかせていますが、
日本で生まれた正義の怪獣(?)、モスラは、養蚕が盛んな頃の日本の発展の象徴でもあり、お蚕様と呼ぶほどに、神格化していたから思いついた怪獣なんでしょうね。
でも、もうモスラや、ゴジラも遠い時代の話になってしまいました。
(クマはこの時代に夢を観ていた二十世紀少年でした。)
現代では、彼ら素敵な存在を「禍威獣(かいじゅう)」などと倒すべき存在としてしまいました。共存の時代だと言うのにねえ。
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目次
山川に命吹き込む青嵐
さてさて、この時期は、梅雨に入るひと時前です。
暑いと言いながら、山や川面を渡る風が
爽やかに吹き、木々の成長を促してくれる季節でもあります。
まさに風が吹く→ 風が福 と考えられますよネ。
山川に
命吹き込め
青嵐(あおあらし) (クマ:お粗末)
我々も、涼やかな風を浴び、豊かなこころを養いましょう。
この春の季語と色
<時候を表わす季語>
萌える木から萌黄(もえぎ)、あるいは萌葱(もえぎ)と
言う言葉が浮かびますが、まさに若葉が
萌えるように成長する季節です。
「山若葉(やまわかば)」、「若葉風(わかばかぜ)」、
そしてそのものの「若葉」が季語として見えます。
桜は散ってしまいましたが、「葉桜(はざくら)」が
いっそうのすがすがしさを醸し出して
いるのではないでしょうか?
すがすがし
葉桜の下
そっと春を置く (クマ:お粗末)
また、本文でもお話しました「蚕豆(そらまめ)」も
代表的な色と香りを感じさせてくれる季語でしょう。
<時候を表わす色>
お蚕さんが吐く糸は何色でしょうか?
この問いには、ほとんどの人が白色と
お答えになるんじゃないでしょうか?
お蚕さんが作る繭を我々人間がいただくのですが、
お蚕さんが吐く糸には膠質のもの
(セリシンと言う粘着質のタンパク質だそうです。
これが、フィブロインと言う糸の主成分となる
タンパク質と一緒に分泌されます)が
含まれていますので、一旦、お湯で煮て、
硬い膠質に灰汁を混ぜて取り除きます。
この作業のことを練ると言い、これから
出来た糸を「練糸」と言いました。
この生糸の色は、ちょっと黄味がかった
白なんですが、この色を「練色(ねりいろ)」と
呼びました。
クマには良い色に思えるのですが、世の女性は
言うに及ばず、かの清少納言も『枕草子』で、
下襲(したがさね)の下に着ける単は練色よりも
白がよいなんて言っていますので、
生糸の黄味を更に消去し、白色とした
「白練(しろねり)」が流行るはずですよネ。
今日はここまでお読みいただき、ありがとうございます。
クマこと高柳昌人(向龍昇人)でした。
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